シーンを考えること、そして継続

田中　郁夫様

マナーに興味を持ち始めたころから現在まで
私は高校を卒業し、すぐにホテル・ブライダルの世界に飛び込みました。と同時に、音楽学校に4年間通い、日夜勉学に励んでおりました。当時の上司であるマネージャーには、勤務シフトの作成上、大変わがままを聞いていただき、今でもざんげの気持ちでいっぱいです。そんなざんげの気持ちを持ちながらも、バンド活動などは積極的にやっていたのが懐かしい思い出です。
そんな日々が3年ほどたった、とある日の朝食に、お客様として来店された一人の立派な方の問いかけがきっかけで、私のマナーやプロトコールへの意識が変わりました。当時まだ21歳ぐらいでしたので、何をおっしゃっているのかはよく分かりませんでしたが、数年後に改めていただいた名刺を確認してみると、（社）日本ホテル・レストランサービス技能協会の役員をされている方でした。今思えば、なぜ私に声を掛けてくださったのか…不思議でならないのですが、それも縁と考え、3年後にはサービスの技能検定やテーブルマナー講師の資格をいただくまでになりました。
25歳の頃には、私はもう十分マナーを理解している…と錯覚に陥りかけた時期がありました。しかし、ホテル・ブライダルの仕事をしていく中で、また、接客サービスをしながら、そして役職も上がっていく中で、悩まされることが多々ありました。自身の曖昧さやブレがあったのではと考えています。その影響は、お客様にも、そして従業員に対しても…。

それから、現在に至るまで色々と勉強していく過程で、日本マナー・プロトコール協会に出会えることができました。出会えた瞬間に「間違いない…」と確信し、通信教育、スクーリング、公開試験、実技試験などを経て、2010年3月に検定１級の認定をいただきました。正直に嬉しさはありましたが、更なる精進が必要ではないのか…と自身に問いかけました。いただいた以上は、検定１級の名に恥じぬよう、充実した社会生活を送れればと考えています。まだまだ経験足らずの私ですが、ぜひ、みなさんもこの資格にチャレンジされて、素晴らしい生活を送られることを切に願います。

検定１級取得を目指される皆様へ

＜筆記試験（準１級）対策として＞
この試験は、膨大なマナーとプロトコールに関する知識が問題として出題されます。『「さすが！」と言わせる 大人のマナー講座』という協会が発行しているテキストがありますので、とにかくこの教本を熟読されて、しっかりとした知識を身に付けることが必須です。その上で、各種スクーリングへの参加、その他の関連書籍の熟読することなどが効果的でしょう。

検定準１級での一番のポイントは、論述試験があるということです。私が苦労したのは、この論述試験でした。言うのは簡単ですが、文書（文章）としてまとめるのは、非常に難しいというのを思い知らされました。もちろん、何度か試験に落ちました。昨今は、パソコンでほとんど全ての文書を作成する時代です。しかも、漢字も外国語も、全ての変換作業はボタン一つです。これではいけないと感じました。つまり、試験対策として自分のペンで自分の字で、紙に向かってテーマを定めながら時間内に論じる訓練が必要だといえます。

＜実技試験（１級）対策として＞
この試験は、どんな環境下にあっても、１級認定者として相応しい言動ができるかが試される、究極のマナー＆プロトコールに関する実技（口頭）試験です。内容は、ビジネスマナー、和室での振る舞い、プロトコール（国旗、席次など）、1分間のセルフプレゼンテーション、自身がマナーに関して普段どのように考えているのか、などですが、何より一番大変なのが、試験開始の10分前に初めて課題を渡されることです。10分あれば内容は把握できます。ただし、内容の把握と行動、つまりアクションとは別物です。もちろん、私も1回で合格できたわけではありません。なにしろ、頭が真っ白になる訳ですから。今になって思うのですが、課題の把握ができているということは、本来、それに関連する動作も同時にできなければならないということです。従って、別物とは言いましたが、やはり自然と動作が出てくるようにならないといけないのと感じています。

これから受験される皆様へのアドバイスとしては、協会のスクーリングに参加されることはもちろんですが、日々の生活の中で”正しいマナーに則った行動”をよく考え、それをご自身で訓練されることです。よく経験をたくさん積めば…と言いますが、私はとにかく訓練だと思います。本番は、大変緊張します。単純にみえる所作であっても、シーンが変われば全て変わります。そして、その単純な所作の中には、相当意味のあるアクションもあるのです。

最後に、私はホテル・ブライダルに関わる仕事をしていますので、ぜひ、この業界のでも多いにマナー・プロトコール検定を広め、受験をされる方には頑張っていただきたいたいと思っています。