検定1級取得者からのアドバイス(5) 清沢 祥子 様
変わっていくことの喜び ~マナーの扉を開けて知った新しい世界~
私は学生の頃から「窮屈で堅苦しい」と評されることが度々ありました。マナーやプロトコールについて学ぶ決心をしたのは、勤務先の後輩からの「あなたは、何を根拠に私に注意をするのですか?」という鋭い一言がきっかけでしたが、実はそれ以前から「自分の本質を確かめてみたい」という気持ちを強く抱いていました。検定準2級のテキストの内容は、およそ半分がすでに得ていた知識の「確認」で、もう半分は新しく覚える内容でした。特に、各国のワイン、チーズについては記憶するのに難儀しました。その後参加したスクーリング講座(※現在の実践ブラッシュアップ講座に相当)では斯界の第一人者の先生方から直接貴重なお話をお聞きしたり、また、この機会でなければ入ることのできない特別な場所を体験できたりと、ある種の異空間に身を置くことによって独特の緊張感を味わいながら、新しい世界と出会うことができました。小笠原伯爵邸、にっぽん丸、裏千家東京道場・・・。一緒に参加した母と感想を述べ合ったのも良い思い出です。
準1級の試験では、神社の正式な参拝方法と国旗の掲揚方法などが出題され、苦戦しました。
そして、いよいよ1級取得を目指した実技試験。試験5分前に渡された課題を見た瞬間に頭の中が真っ白になりました。服装のマナー、仕事で大きなミスを犯したときの対応、和室でのあいさつ等々、覚えているはずなのにいざとなると正確に動くことができない、言葉が出てこない・・・。できると思っていたことが、実は身についていなかったと思い知らされて失意のうちに帰路につきました。結果はもちろん不合格でした。
それから半年後、再チャレンジでようやく合格通知をいただきましたが、受験後、羽田空港に向かうモノレールの車中で強烈な胃痛に襲われました。あれほどの緊張感を味わうことはもう二度とないかもしれません。
検定1級取得を目指される皆様へ
<筆記試験対策として>
準2級のテキスト、または『「さすが!」といわせる大人のマナー講座』を熟読して覚えることはもちろんですが、さらに学びの範囲を広げることが必要です。私の場合は協会理事の皆様の著書を読んだり、毎日見聞きするニュースなどもマナーの視点から注意深く見つめて疑問を抱く、抱いた疑問はその都度解決するなどの習慣が役に立ちました。
<実技試験対策として>
ビジネスマナー・食事のマナー・暮らしのマナー、各分野から出題されます。課題を理解する能力、審査員の前でも自分の力を発揮できる冷静さ、そして、正解を導くための知識と技術が必要です。近道はありません。日々の積み重ねがすべてと言ってよいでしょう。知識と実践の間に距離を置かないことがポイントです。 考えてみると、私たちは様々なことを省略・簡略して日々を過ごしていることに気付きます。その結果、和洋を問わず「正式な動き・ことばづかい」を忘れてしまっていることも多いのではないでしょうか。日頃から立つ・座るなどの基本も含めて本来あるべき形や姿を実践していると、試験当日も自信をもって振舞うことができるように思います。
さて、私は今日まで小笠原流礼法の真髄である「相手を大切に思う心を形に」という言葉に惹かれて学習を続けてきました。この言葉に出会う前の私は、「お行儀の悪いことをしてはいけない」と思って振舞っていました。けれども今は「皆が気持ちよく過ごすため」の振舞いを心がけるようになりました。こうした根本的な考え方の変化は私の人生に劇的な変化をもたらしたと言っても過言ではありません。「思いを込める」「願いを込める」ということを知ったおかげで、私の毎日はとても明るいものになりましたし、礼やマナーの背景にある各国の歴史や文化を知ったことによって、見慣れた景色さえも輝きを増して見えるようです。
私は秋田県で会社員として勤めながら、マナーやプロトコールについて学び・確かめる作業を繰り返しているうちに1級取得までたどり着くことができました。「知らないこと」「できないこと」はまだまだたくさんありますが、これからも目覚めるたびに新しい何かを覚え、身に付け、いつの日か地域の皆様と共に学ぶ機会をもつことができたらと夢見ています。
検定実施レポート一覧